2014年2月28日

こけしとは?

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子供を遊ばせ、子供を守るのがこけしだった?

江戸時代、子供向けの玩具を「赤物」といい、赤物師と呼ばれる人々が売っていました。そのうちのひとつがこけしです。

赤は天然痘から守る色だと考えられていたこの時代、多くの人が子供用の玩具としてこの赤物を買い求めました。

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松川だるま(仙台だるま)


こけしの起源は?

こけしの起源については謎も多いようです。芥子(けし)人形に見られるように、すでに木で人形を作ることは日本各地で行われていたため、これが元祖のこけしだとはっきり特定することは困難です。 おそらく起源は複数あると考えられます。

しかし、今日的な意味でのこけしは、天保年間(1830-1844)までのころには、東北地方の農民たちの湯治文化のなかで、その土産品として取引されていたものを指すようです。

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こけしも赤物のひとつ


宮城県がこけし発祥の地?

幕末である文久二年(1862年)仙台藩(現在の宮城県)の記録(「御郡村御取締御箇条御趣意帳」(高橋長蔵文書)に、赤物師が売り歩く「木地人形こふけし」は贅沢品であるから売買をやめさせるようにとの記述が見られます。

このことから、当時すでに宮城県において、こけしの製造と売買が盛んであったことがうかがえます。

さまざまな文献調査から、遠刈田(とおがった)温泉がこけし発祥の地か、またはそこに一番近かったのではないかと考えられています。

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遠刈田温泉『神の湯』


東北のこけしには、各地に以下のような系統があります。

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【青森県】

■津軽(つがる)系(温湯(おんとう)温泉、大鰐(おおわに)温泉)温湯系ともいう。

一木作りです。頭部と胴が一本の木から作られています。
もっとも、この製法にこだわりはあまりないようで、むしろこの系統の最大の特色は、とてもモダンで、まるで西洋のセルロイド製の人形をそのまま木で作ったかのような現代的なデザインが実に多いことです。

他にもねぶた模様や、アイヌ模様など、さまざまな図案があり、チャレンジ精神にあふれた系統であるといえます。


【秋田県】

■木地山(きじやま)系(木地山)

一木作りです。頭部と胴が一本の木から作られています。

顔立ちは素朴な「百姓の子供」であり、胴もまったく華美なところはなく、普通の農民の衣装に描かれているものが多いです。

普段の生活風景をそのまま形にしたこけしであり、どこか懐かしい、とても親近感のわく味わいに仕上がっています。


【山形県】

■肘折(ひじおり)系(肘折温泉)

なんといっても、黄色く塗られた胴が特徴的です。さらに、菊などの花模様で豪華に飾られています。

顔の表情も眼力があって、とてもたくましい顔立ちをしています。

雪国の厳しい自然環境にも耐える、たくましい子供に育ってほしいとの親の願いが感じられるかのようです。

■山形系(山形市、米沢(よねざわ)市、寒河江(さがえ)市、天童(てんどう)市)

地理的に近い作並系とよく似ています。山形作並系として一緒の系統とする考え方もあります。

雪国の童(わらべ)を思わせる色白な木地に、幼く愛らしい顔が描かれています。

胴には豪華な花の模様が、写実的に描かれたものが多いようです。

■蔵王高湯(ざおうたかゆ)系(蔵王温泉)

地理的に近い遠刈田系とよく似ています。頭頂には放射状の朱塗りの飾りがあるものは特に遠刈田系からの影響を感じさせますが、黒髪のものも多いのがこの系統の特徴となっています。

胴も菊や桜などが写実的に描かれているものが多く遠刈田系に似ますが、胴はずっしりと太く、また曲線を描いてふくらみを持つ作品が多いようです。


【岩手県】

■南部(なんぶ)系(盛岡(もりおか)、花巻(はなまき)温泉)

アオハダの木を使った真っ白な木材を使ったものが多く、何といっても首がグラグラと動くように作られているのがこの系統の特色です。

あまり彩色を施さない、シンプルなものが多いのも特徴のひとつですが、最近は他の系統の影響を受けて、さまざまな彩色を施したものも登場しました。

木材もアオハダに限らず、他の木材にもチャレンジしており、極めて実験的な作品が多い若い系統とも言えるでしょう。


【宮城県】

■鳴子(なるこ)系(鳴子温泉)

首を回すと、キュッキュッと音がなるように細工されています。胴は中ほどがやや細いのも特徴的です。

黒い前髪が描かれ、まるで京都の高貴な家の子供に見えます。

菊、楓、牡丹などが写実的に描かれているのも人気のひとつです。

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■作並(さくなみ)系(仙台市、作並温泉)

胴は単なる円柱ではなく、まるで昔のコーラの瓶のように、綺麗な曲線を描いて下の方が細くなっていて、子供の手で持ちやすくなっています。

遠刈田系から強い影響を受けたようで、菊の図案が特徴的となっています。

■遠刈田(とおがった)系(遠刈田温泉)

頭は大きく、胴が細いのが特徴。頭頂には放射状の朱塗りの飾りが、また胴には菊や梅の花の図案が多く用いられています。

目は切れ長で細く上品です。にっこりと上品に微笑みをたたえた表情が人気のようです。

おそらく日本人が考える典型的なこけしのデザインであり、また同地はこけし発祥の地であるとの説も強く、日本各地より買い求める愛好家が絶えません。

また、他の系統のこけしに多きな影響を与えてきたという歴史的な点においても、絶対に無視できないのが遠刈田系となっています。

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■弥治郎(やじろう)系(白石市弥治郎)

こけしを作るときに用いるロクロの輪の模様が特徴的です。

頭部は上から見るとまるでコマのように見えます。または帽子をかぶっているいるようだと感じる人も多いようです。

胴は細くくびれている物も多いです。


【福島県】

■土湯(つちゆ)系(土湯温泉、飯坂(いいざか)温泉、岳(だけ)温泉)

他の地域のこけしは高貴な顔立ちが多いのに対し、とても庶民的でユニークな顔立ちをしています。

漫画のキャラクターのように見えるもの、ピエロのように見えるもの、歌舞伎役者に見えるものと、表情や飾り付けもさまざまです。

胴はロクロを使った輪状の単純な模様から写実的な花柄まで多種多様です。

子供の遊び道具として、徹底的に実用品であったことがうかがえます。